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第3章 混沌と模索 牧の視点

SPEAKER

牧 亮児
ネオス株式会社
サービスソリューションカンパニー バイスプレジデント

Interview

私が統括する部門は、受託事業における開発機能を担っていますが、2010年代を振り返ると、「とにかく忙しかった」という一言に尽きます。私自身はネオスの前身企業であるカタリストモバイルから入社しましたが、いつ社名がネオスに変わったのかをはっきり思い出せないほど、目の前の案件に追われる日々でした。前職ではSEとして開発業務に携わっていましたが、ネオスではプロジェクトマネージャーとして、動画配信系のサービスを中心に数多くのプロジェクトを担当してきました。

当時は、通信インフラやスマートデバイスの急速な進化に伴い、動画サービスの需要が一気に拡大し始めた時期。我々が手がけたのは、NTTドコモのストリーミング端末「dStick」向けのソフトウェア開発や、大手エンタメ企業の動画配信サービスなど、いずれも多くのユーザーに利用される大規模な案件が中心でした。
その技術的な要件やプロジェクトの規模感は、それまで手掛けていたガラケー向けのサービス開発とは全く異なるものでした。ガラケーの場合は、端末の仕様が限定されており、ある意味で閉じられた環境での開発が中心でした。対して、スマホの登場以降は、対応すべきデバイスやOSの種類が一気に増え、さらに短いスパンで仕様やトレンドがどんどん変化していく。そうした“開かれた世界”での開発に、当初は戸惑いながらも手探りで進めていくような状況でした。
また、動画配信サービスには特有の技術要件があります。さらには、動画を視聴するスマホの端末スペックやネットワークの速度もガラケー時代のそれとは別物。これまでの知見がそのまま通用しない中で、スマホ向け動画配信サービスの開発は、ほぼゼロベースからの設計・構築を求められるものでした。タブレットやテレビなど多様なデバイスへの対応、急速に変わっていく仕様や配信形式への最適化、年々拡大するユーザー負荷対策など――前例の少ない課題に日々ぶつかりながらも、なんとか形にしていく。その連続でした

夜間や週末など利用が集中する時間帯のトラフィックにも耐えうるパフォーマンス設計、障害発生時の対応体制など、運用面での備えも欠かせません。プロジェクト関係者も多岐にわたるため、要件定義や調整業務には高い精度が求められ、仕様変更のたびに各所との調整や実装方針の検討など、地道でありながら毎回が試行錯誤でした。我々にとっては“開発しながら学ぶ”という、まさに現場が研鑽の場だったのです。ガラケー時代の受託開発とは比べものにならないスピードとスケールでプロジェクトが進行する中、要件定義や開発プロセスの整備が追いつかず、いわゆる“炎上”に発展するような厳しい案件も少なくありませんでした。

我々のチームではマネージャー陣も人材と案件を抱えながら、常に最前線でプロジェクトの舵取りをしており、私自身もいくつもの山場をメンバーと乗り越えてきました。こうした開発の現場はあまり表には出ませんが、社会で広く利用されるサービスの“土台”を担う、非常に重要な領域です。
だからこそ、試行錯誤しながら積み上げてきた一つひとつの経験が、今のネオスの受託事業を支える礎になっています。クライアントと共にサービスを育て、常に変化するトレンドや進化する技術に真正面から向き合ってきた。この積み重ねこそが、ネオスという会社の「目に見えない競争力」なのだと感じています。