SPEAKER
- 黒木 伸和
- ネオス株式会社
サービスソリューションカンパニー バイスプレジデント
Interview
私がネオスの前身であるカタリストモバイルに入社したのは、ちょうどガラケーからスマートフォンへの移行期にあたる頃でした。課金決済システムや動画配信システム、TVに差し込むだけで映像コンテンツを楽しめるドコモのスティック型デバイス「dStick」の開発など、モバイルソリューション全般を手がけてきました。
AI領域に関わり始めたのは、2010年代後半、ディープラーニングの台頭期でした。我々の役割は“AIそのものを開発する”ことではなく、AWSなどの既存サービスやAIモデルを活用し、いかに組み合わせて新たなサービスやソリューションを生み出すかという点にあります。つまり、AIを構成するさまざまな要素技術やアーキテクチャを理解し、それをどう実装し、価値に変えるか――これをミッションとして、自社サービスを中心に生成AI技術を用いた開発に継続的に取り組んできました。
2016年頃には、チャットボット事業の本格化とともに、社内文書などのデータを活用した独自エンジンを開発。対話パターンをあらかじめ設計する従来型のチャットボットに対し、既存のデータから即座に回答を生成できる仕組みを構築することで、より実用的なAIサービスの提供をめざしてブラッシュアップを重ねてきました。

こうした土台があったからこそ、2022年にChatGPTが登場した際にも、その本質を素早く捉え、アクションに移すことができました。GPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、従来の自然言語処理技術を“量の力”によって実用レベルまで押し上げたものであり、「まったく新しい技術」というよりは、「既存技術の延長線上で大きく成長したもの」と捉えています。そのため、これまで培ってきた知見や仕組みを活かすことで、自社AIサービスとの連携や、新たなAIソリューションの開発にもいち早く着手することができたのです。
我々がこうした新技術を即座に活用できるのは、クラウドやインフラ技術における長年の蓄積によるところも大きいです。物理サーバーの運用に始まり、AWSの登場による仮想化やコンテナ化、さらにはサーバーレスといったクラウド技術の進化に合わせて、継続的に知見を深めてきました。たとえば、「ログインして使うAIチャットボットを構築したい」といったニーズがあれば、すべてをゼロから作るのではなく、認証や管理機能といった部分は既存のアーキテクチャを活用することで、AI開発に集中できる体制を整えています。こうした効率的な開発体制と蓄積されたノウハウは、生成AI時代の今、より一層重要性を増しています。
2024年にリリースしたAIソリューション「AIdea Suite」の開発も、まさにそうした考え方に基づくものです。「AIdea Suite」は、用途に応じたプロンプト設定やカスタマイズが可能な汎用性の高さが特徴で、チャットによる問い合わせ対応をはじめ、セールスアバターによる営業活動や、社内研修のフォローアップなど、さまざまな業務課題にフィットさせる形で柔軟にAIを活用することができます。これもゼロベースで創り出したものではなく、過去のプロジェクトで培った認証機能や管理系の仕組みといった技術資産をベースに応用し、効率的な開発と高い機能性の両立を実現しています。
技術は、突然生まれるものではなく、常に“過去の延長線上”にある――。そうした認識のもとで、新しいテクノロジーやトレンドを柔軟に取り込み、再構成していくことが今後ますます重要になっていくと考えています。

今後の理想的な開発のあり方としては、自社・受託を問わず、エンジニア一人ひとりが「自分たちのソリューションを開発している」という当事者意識を持ち、効率化・最適化のために何ができるかを常に考えながら、トライ&エラーを重ねてアーキテクチャを洗練させていくこと。そして、その成果を他のプロジェクトにも応用し、組織全体で技術力を高めていける状態を目指しています。
技術が“過去の延長線上”にあるように、その進化についていくには、日々の積み重ねとアップデートが不可欠です。そうした継続的な挑戦を通じて、私たちはAIのような新技術と向き合いながら、次の価値創造へと踏み出していきます。