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第6章 ゲーム事業の開花 山口の視点

SPEAKER

山口 直人
ネオス株式会社
コンシューマ&コンテンツカンパニー バイスプレジデント

Interview

私は2007年に、ネオスの前身であるプライムワークスに入社しました。前職のNECグループでは、ゲームや辞書などを収録したCD-ROMの販売をはじめとするマルチメディアコンテンツビジネスに携わり、当時としてはまだ珍しかったコンビニを販路とした全国展開などを通じて、コンテンツ販売やライセンス交渉の経験を積んできました。そうした知見が評価され、ガラケー向けコンテンツ事業の強化を進めていたプライムワークスから声をかけていただいたことが、入社のきっかけです。

当時はガラケー全盛期で、着せ替えサービスを中心に業績は右肩上がり。私はマーケティング担当として、通信キャリアなどのプラットフォーマーやキャラクターの権利元と連携し、日々新たなコンテンツ企画や販促を展開していました。勢いがある分、数字に追われながらも手応えのある時期だったと思います。しかし数年後、本格的なスマホ移行が始まると、ガラケー向け事業は次第に下火となり、新たな事業の芽を模索する日々が始まります。
例えば、スマホ向けカジュアルゲームアプリ分野。ここで私たちは一度ゲームコンテンツ事業に挑戦しています。流行アプリの分析データをもとに、テストマーケティングも兼ねてライトなゲームアプリをいくつか開発し、ネオスブランドとして展開しました。リリース後に広告を投入してランキングを押し上げ、自然流入を狙う戦略です。ただ、想像以上に競争は熾烈で、一定数のユーザーを確保するだけでも膨大な広告費が必要であり、この時は2年足らずで撤退を決断することになりました。

その後もさまざまな分野で模索を続けるなか、キッズアプリ事業に光明が見え始めます。dキッズ向けの展開が好調に推移し、自社アプリとしての事業拡大に向けて私たちのマーケティングチームも本格的にジョインすることに。広告配信やキャラクターイベントとのコラボなど、デジタルとリアルの両面から施策を展開し、これまで培ってきたライセンスビジネスやプロモーションのノウハウが大いに活かされました。
そして次なるステップとして見据えたのが、よりスケールの大きい「コンソールゲーム市場」へのチャレンジです。世界中にユーザーが存在する巨大市場でありながら、私たちにとってはまったくの未知の領域。最初は何から着手すべきか手探りでしたが、プロダクトをどう市場に届けるかという点においては、マーケティング視点から一定の知見がありました。
加えて、競合調査を進める中で、大手ゲームメーカーほどその手法が正攻法かつ堅実であることに気づきます。やるべき施策が明確で、奇をてらったプロモーションはせずとも、自社ソフトを売るための確立された手法を着実に実行する。もちろん、作品やターゲットに応じて柔軟な対応は必要ですが、計画の骨子をつくる上で非常に参考になりました。

そうした学びを経て、「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』」では、海外展開にも踏み出しました。同業他社では一般的に海外展開はサブライセンス的に他社に委ねることも多いようですが、我々は今後の継続的な事業展開を見据え、販路の開拓からプロモーションまで、すべて自分たちの手で挑戦することに。言語も文化も異なる中での試行錯誤は簡単ではありませんでしたが、現地の特性に合わせた施策や販売パートナーとの関係構築を少しずつ積み重ねていきました。こうしたナレッジの蓄積により、次作の「クレヨンしんちゃん『炭の町のシロ』」ではより一層効果的な施策展開につながり、前作を上回る海外販売数を実現しています。

ネオスには、“良いモノ”を生み出せる人材がたくさんいます。そして、それをユーザーに届けるために、私たちのようなマーケティングチームが存在する。この両者が連携し、力を発揮して初めてビジネスとして成立するのだと思います。
さらに、優れた人材がいるだけでなく、それぞれの適性や「やりたいこと」がきちんと尊重される環境があることも、大きな強みです。どんなに良いアイデアでも、実現に向けて挑戦できる場がなければ形になりません。成功する確証がなくとも、挑戦する価値があるならやってみよう――そんな風土がネオスには根付いています。言葉にすると当たり前のようにも聞こえますが、実際にそれを継続的に実践できている会社は、そう多くはないのではないでしょうか。
この環境があるからこそ、一人ひとりが自分の役割に全力で取り組めるし、その積み重ねが着実に成果として表れています。ゲーム事業の成功も、まさにそうした無数の挑戦と試行錯誤の先に生まれたものであり、私たちのチームにとっても大きな自信と経験になっています。

ゲームという領域には、人の心を動かす力があります。驚きや感動を届けられるエンタメの力を信じ、ネオスならではの価値を世界に届けていくために、これからも挑戦を続けていきたいと思います。