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第8章 広がるヘルスケアの地平 渡辺の視点

SPEAKER

渡辺 敏成
株式会社Wellmira
代表取締役社長 CEO

Interview

Wellmiraの前身であるリンクアンドコミュニケーションを創業したのは2002年のことです。以来一貫して取り組んできたのはデータを活用した予防領域への取り組み、具体的には管理栄養士による栄養指導を社会に広く普及させることでした。
当初は、地域クリニックに来訪される患者を対象に、管理栄養士による食事アドバイスや運動プログラムの遠隔指導を実現するBtoBサービスを立ち上げました。やがてこの仕組みは、生活改善などの健康関連情報をフリーペーパーにまとめ、各クリニックで配布するサービスへと発展します。

その後、インターネットの普及を背景に事業をデジタル領域へシフト、健康関連情報メディアを経て、AI健康アプリ「カロママプラス」や管理栄養士によるオンラインカウンセリングなど、HealthTech分野の発展とともに事業を拡大してきました。
その過程でネオスと協業する機会が増え、コンテンツやアプリ開発などを通じて連携を深めました。そして2024年1月、ネオスのヘルスケア事業を株式交換により譲受。当社はテクミラグループの一員となり、社名をWellmiraへ改めました。振り返れば、オフラインで提供していた情報がネットによってデータ化され、活用の可能性が一気に広がる流れを経験してきましたが、このプロセスはテクミラグループの成長とも文化的に通じる部分が多いと感じています。

グループ入り以降は、既存サービスの強化や新たなソリューション開発に注力し、順次リリースを進めています。特に生成AIやSaaS技術といったグループのノウハウを活用することで、ヘルスケア事業の価値は着実に高まっています。
例えば「カロママプラス」では、ネオスの生成AI技術とのシナジーにより食事写真の解析精度が大幅に向上しました。さらにAIとユーザーの対話もよりパーソナルになり、いずれは食事内容の分析提案にとどまらず、“行動予測”に基づくライフスタイルのトータル提案まで、管理栄養士が担っていた役割をAIでより強固に補完し、サービスレベルの一層の向上が実現できる段階が見えつつあります。

創業以来、私たちは「一人ひとりの健康データに基づく改善と維持」を軸としたヘルスケアサービスを提供してきました。近年、国際的にも注目が高まるPHR(パーソナル・ヘルスケア・レコード)は、まさにその延長線上にあります。2024年11月に開催された日本医療情報学会主催の会合では、講演の約4割がPHR関連、さらに約4割が生成AI活用をテーマにしていました。高い信頼性を持つ医療データに対して、PHRは取得の難しさが課題とされますが、AIやデバイスの進化によってデータの取得精度は向上し、活用方法も多様化しつつあります。そうした背景から、国も経済産業省を中心に、日常生活におけるPHRのより一層の活用を推進しており、当社もその流れに合わせて対応を強化しています。
特に大きな節目となったのが、2025年度の大阪・関西万博への参画です。私たちはPHRや生成AIを活用した新サービスを、データ連携パートナー企業とともに開発・展示し、来場者が自身の生活習慣や健康データをもとにした“未来の健康体験”を実際に体感できる場を設けました。万博という国際的な舞台で、多様な来場者の反応を直に得られたことは、サービスの社会的意義を再確認すると同時に、世界に対して自社の技術を示す貴重な機会であり、PHR分野で一定の存在感を確立する契機となったのです。

カロママプラスでは「PHR×AI」によるサービス強化を推進、よりパーソナルな健康支援を実現している

さらに、少子高齢化や医療費増大といった社会課題を背景に、「健康経営」市場も拡大を続けています。生産性の向上と従業員の健康増進は表裏一体であり、その取り組みには食事やライフスタイル全般への個別アドバイス、ウォーキングなどの行動改善を促すサービスが不可欠です。これらはまさに創業以来私たちが取り組んできたテーマであり、長年蓄積した知見が活かされています。
今後も私たちは多様化する社会のニーズを的確に捉え、テクミラグループに蓄積された最先端技術を活かしながら、ヘルスケア分野のさらなる進化と革新に挑んでまいります。