SPEAKER
- 藤岡 淳一
- JENESIS株式会社
代表取締役社長 CEO
Interview
“ネオスとの出会い”を契機に経営危機を乗り越えたJENESISは、社会に広がるデバイス需要を着実に捉えて業績を伸ばし、グループの中核事業会社としての存在感も次第に高まっていきました。
しかし、成長軌道に乗りかけたその矢先――2020年、世界を揺るがす新型コロナのパンデミックがJENESISを直撃。深圳の自社工場は厳しい制限下に置かれ、通常の稼働は到底望めない状況になりました。現地の街もまるで時間が止まったように静まり返っていて、「これは想像以上に深刻だ」と覚悟を決めたのを覚えています。
最優先は、何よりもスタッフの安全。現場の不安を少しでも軽減できるよう防疫体制を整備しながら、生産ラインの調整に奔走しました。日々変わる情勢に対応しながらも、最低限の生産を維持するために、政府機関や取引先、パートナー企業との連携を密にしてなんとか踏ん張った、あの時期は本当に神経をすり減らしました。
そこに追い打ちをかけるように、主要クライアントであるインバウンド関連の需要が一気に蒸発します。観光が止まるというのは、これほどまでに影響が大きいのかと痛感しました。「今の事業構造に依存し続けてはいけない」と、自ら現場で指揮を執り、新たな業界やニーズの開拓に取り組みました。すぐに結果が出るようなものではありませんでしたが、少しずつ手応えが得られ始め、ようやく希望が見えたのが2021年の初め頃だったと思います。
しかし、ようやく一息つけるかと思った矢先に、今度は半導体不足が世界を襲います。そこからはまた、材料の確保、設計の見直し、価格上昇との戦いでした。さらに2022年には急激な円安が進行。為替の乱高下が製造コストを直撃し、経営的にも厳しい判断を迫られる局面が続きました。ただ、こうした状況にも冷静に対応できたのは、過去の経験があったからこそだと思います。過去の会社倒産や綱渡りでの資金繰り――あの頃に比べれば、経験も備えもありました。
この数年間は、まさに試練の連続。けれどもその一つひとつを乗り越えるなかで、JENESISは一層の柔軟性と強さを身につけることができたと感じています。どんな環境下でも事業を継続し、品質とコストを最適化できる体制を築いてきたという自負が、今の土台を築いています。

苦境を乗り越える中で、JENESISが目指すべき次のステージも、より明確になっていきました。
ネオスとの提携によるグループ参画以降は、BtoB領域への本格的なシフトを進め、クラウドを基盤としたIoTツールの開発に注力しています。「主役はクラウド、デバイスはあくまでユーザーとの接点となるエッジの役割」――。この考え方が今のJENESISにおける開発の根幹となっています。半導体の集積化やリチウムバッテリーの小型化といったデバイスの進化は一巡し、今後はクラウド側でいかに価値を提供できるかが問われる時代です。IoTサービスにおいて、デバイスが多機能化すればするほど、消費電力が増え、耐用年数が下がる。だからこそ、クラウドで処理できるものはクラウドに逃がし、デバイス側はできる限りシンプルに、必要最小限の機能に絞り込む。いわば“引き算の発想”が、これからの開発にも、そして製造にも求められているのだと思います。
これは、かつてすべての製造工程を内製化していた頃の考え方とは大きく異なります。今は何でも自前でやろうとする必要はない、外部と協働し、最適なパートナーと組むことで、コストも品質もより高いレベルで両立できる――そんな柔軟な戦略が必要な時代に入っていると感じています。
そして、深圳一極集中の時代も終わりを迎えつつあります。米中摩擦や人件費の上昇など、外部環境が急激に変化する中、世界は新たな生産拠点を模索しており、私たちもまた、JENESISらしいグローバルなサプライチェーンの再構築に挑んでいます。中国だけにこだわらず、世界中の“つくる力”を束ねて、よりしなやかで強いモノづくりの体制を目指しています。
「変化を恐れず、引き算で磨き抜き、IoTで新しい価値を創る」。幾度となく危機を乗り越えてきた私たちJENESISは、次の時代のモノづくりをリードしていく覚悟を胸に、これからも挑戦を続けていきます。
