テクミラホールディングス株式会社 20TH ANNIVERSARY SITE

NODE ep.10 2004-2010

第10章 NODEが示す軌跡と未来

変化の激しいIT業界において、20年という年月をサバイブしてきたテクミラグループ。その歩みは挑戦と適応の連続であり、築き上げた経験とネットワークは確かな資産となっています。そして今、リアルとデジタルの融合が加速する時代の中で、新たな価値創造に挑むフェーズへと踏み出しました。本社史はここで一つの区切りを迎えますが、グループが歩みを続ける限り、「NODE=節目」は今後も連なり、未来を切り拓く起点として新しい軌跡を描いていくことでしょう。

NODE ep.10 第10章 NODEが示す軌跡と未来

変化から導かれる成長の道筋

この20年、IT業界は目まぐるしい技術革新の連続であった。10年先の姿を誰も予測できず、AIの台頭によってその見通しはますます不透明になっている。そうした変化の中で淘汰されていった企業も数多くある一方、テクミラグループは歩みを止めず事業を継続してきた。

創業者として業界の変遷を見てきた代表の池田は、「この20年における決定的な変化は、“米国企業が築いた技術基盤”と“アジア企業が築いた製造基盤”のデファクト化」だと語る。スマートフォンの登場など、特にこの10年ほどで米国や中国はIT領域で確固たる地位を築き、日本の電機・情報通信産業は相次ぐ撤退や縮小を余儀なくされた。電機メーカーは大半が特定分野にシフトする道を選び、コンテンツ産業や重電・プラントといった一部領域は生き残るも、半導体やソフトウェア、製造分野においてはほとんど存在感を失った。そうした中、これからの日本企業に問われるのは、海外の技術を土台にしつつ、”いかに自らのオリジナリティを盛り込み、独自の立ち位置を築けるか”である。
テクミラグループはこの視点をもって事業領域を見極め、現在二つの軸によって事業を展開している。ひとつは、「海外の技術を活用し、日本市場に即した価値へと昇華させる道」。もうひとつは、「日本独自の感性を磨き、世界市場で勝負していく道」である。この二つの軸を両立させることで、グローバルに通用するIT企業グループを目指し、独自の成長軌道を描き始めている。

グローバルを取り込み、日本発の価値創造へ

IT黎明期であった創業当初は、リアルとデジタルの領域は明確に分かれており、あらゆる産業のIT化が求められ、グループもその流れに応えて事業を拡げてきた。だが、今やデジタルは社会のスタンダードとなり、リアルとの境界は溶け合いつつある。
テクミラグループでは、それぞれの産業がもつ固有のデータや市場構造を的確に捉え、その特性に即した形でテクノロジーを組み込むことで、デジタルを組み込んだ新たなリアル事業の創出に取り組んでいる。
例えば、ヘルスケア分野ではWellmiraが膨大なPHRデータや栄養素を加味した食事アドバイスのためのノウハウなどを蓄積している。これにAIを掛け合わせることで、独自のHealthTechサービスを展開していく方針だ。また、医療や教育、流通・小売や人材採用、働き方といった日本独自の文化や商流が強く影響する分野において、地域性や業界慣習に適合させることで、海外企業から侵されにくい独自性のあるサービスを作っていくことが可能であると考えている。

こうしたロジックは、今まさに変革期を迎えているAI分野にも当てはまる。かつて「IT化」や「モバイル化」が時代のテーマであったように、今後は、あらゆるものの「AI化」が企業や社会のスタンダードとなる。そうした状況下で、米国発のAI技術をそのまま導入するのではなく、固有の商慣習や組織文化といかに適合させていくかが成功の鍵を握る。
ネオスは「OfficeBot」を起点に企業や団体へのAI導入を進めており、日本独自のセキュリティや品質基準といったニーズを取り込みながら、業務プロセスや現場の実情に即したサービスを提供している。技術を輸入するだけではなく、サービスデザインとカスタマイズによって日本企業に合った最適化を行う――その積み重ねが、グローバル技術を土台としながらも日本発の価値を生み出す原動力となっていくであろう。
今後AIの活用範囲はさらに広がり、あらゆる領域に浸透していくことが予想される。現在浸透しつつある「OfficeBot」を顧客への導入の足掛かりとして、これに先端技術と知識をアップデートし続けることで、AIがもたらす新たなスタンダードを自らの手で形づくり、次代をリードする存在へと成長を図っていく方針だ。

また、デバイス分野においても日本は製造メーカーとしての地位をすっかり失ってしまった。これに代わって、中国が圧倒的な地位を築いている現状がある。そうした中で、JENESISは「モノづくり日本」のDNAを継承し、日本のメーカーとしてアジアのサプライチェーンやヒューマンリソースを活用しながら、製造技術の維持と進化に取り組んでいる。さらにハードウェアをベースとしつつも、テクミラグループが持つソフトウェア技術を融合させることで、日本を代表するIoTの総合企業としての存在感を確立しようとしている。

日本の技術と感性が拓く新領域

テクノロジーの領域で米国企業がイニシアチブを握る一方で、コンテンツ分野においては日本が独自の強みを築いてきた。世界に誇るエンターテインメント産業はその象徴であり、任天堂やソニーがゲーム市場で確かな存在感を放つように、日本のコンテンツ技術や表現力は海外市場において十分に通用するポテンシャルを秘めている。ネオスもまた、良質なコンテンツを生み出す力を基盤に、独自の世界観とクリエイティブを武器としたゲーム事業の拡大を見据えている。2021年より展開している「クレヨンしんちゃん」シリーズは国内外で高い人気を得ており、海外市場にも通用するユニークなゲームメーカーとしての存在を確立しつつある。今後も「クレヨンしんちゃん」シリーズに留まらず、日本発の新たなコンテンツの継続的な発信により、世界展開を拡大していく計画である。
また、新事業「8Way Audio」では、“音”というコンテンツを生み出す構造に着目する中で、これまでにない音体験を創出し、日本発の新たなスタンダードを世界に示そうとしている。空間オーディオの分野では、映画や音楽を中心に米国の「Dolby Atmos」が市場を牽引している一方で、「8Way Audio」は特定の方法で作成された立体音響コンテンツに限定されることなく、日常のあらゆる場面で立体音響を楽しめる点に独自の強みを持つ。まずは、SHARP製スマートフォンへのライセンスから事業がスタートしているが、今後は世界に類がないこの技術を活かした様々な展開を計画中であり、日本の技術と感性が世界の音体験を刷新する道を開拓していく考えだ。

枝葉を広げ、未来を拓く

こうして20年を経て形作られた現在のテクミラグループは、太い幹から枝葉が伸びる“大樹”を思わせる。蓄積したIT技術とノウハウを幹とし、そこからリアル産業や各Tech領域に枝葉を伸ばし、多種多様な事業群を含めた一つの木を形成している。さらに、各社の技術やサービスの掛け合わせなど、枝葉同士がつながり合い新たなシナジーを生むことでより拡がり、グループとしての競争力を支えようとしている。そして枝は時に剪定され、残った枝が成長して実を結び、やがて新たな芽となって次の世代を創り出していく。このような姿勢こそが、テクミラグループの事業展開の本質といえるだろう。
そしてその事業展開を支えるのが、20年間で培ってきた企業文化だ。環境変化に適応する柔軟性を備えた「変化力」、時代の流れを察知し方向性を見極める「先見力」、そして信じた道をブレずに貫き続ける「執着力」。これら三つの力は、数々のNODEを振り返ってみても、一貫してグループを支えてきた原動力であると言える。

次の20年においては、「デジタル化のその先」を追求することがテーマとなる。AIやこれから登場するであろう新しい技術や市場。形を変えながらも、その挑戦は無限に続いていき、テクミラグループはこれからも技術と創意を結集することで、新たな価値創出に挑み続ける。社会の課題を「Technology」と「Creative」で解決し、持続可能で創造的な未来を支える企業であり続けるために。

あとがき

次のNODEに向けて...

20年という時間の中で、いくつもの「NODE(節目)」が重なり、方向性や形を変えながら続いてきた軌跡が、そこにはある。この社史は創業からの「NODE」をたどりながら、なぜグループが20年間歩み続けることができたのか、その原動力を確かめ、これから先に進むための羅針盤でもある。
市場や技術の変化、組織の成長、そして数々の挑戦――節目ごとに決断を下し、新たな道を切り拓いてきたが、いずれの局面でも変化を恐れず挑み続ける姿勢と、技術と創意を重ねて新たな価値を生み出す文化が、未来への扉を開いてきた。

節目は終わりではなく始まりである。テクミラグループは、この20周年を通過点として、次の10年、そしてその先へと歩みを進めていく。これまでの節目がそうであったように、次のNODEもまた、新しい未来を切り拓く起点となるはずである。